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制作秘話 85

《其の八十五》

小説が上手く書けるようになりたい、これまでそう希望されるかたのためにいろいろと、私なりに語ってきましたが、一つ、こういう視点はどうだろうというのを思いつきました。

書き手=自分以外の人(読者)のことを考えながら、書く。
誰かのために書く、ということですね。自分の楽しみだけではなく。


イギリスの童話・児童文学の傑作のいくつかは、身近な一人の子どもを楽しませたくて、書かれたのです。自分のためではなく。

私がこう提案する理由の最大のものは、「プロになったら自分よりも読者優先を求められることが多いから」なんですけれどね。

自分が楽しいのもたいせつですが、自分だけが楽しくて、他人が読んでも楽しくないのはプロとしては没なのです。
かといって、自分では楽しくない、他人の都合だけに合わせた作品は、これまたなかなか「おもしろかった」と言われるのはむずかしいものです、経験上。


では、具体的にどうすればいいのか。

一例として、私が、ラノベの人気イラストレータさん、児童文学や童話の有名イラストレータさん、からうかがったお話をご紹介してみましょう。
といっても、たった一言に集約されますけれど。何人ものかたが、こうおっしゃいました。

「読んだら絵が自然に浮かんでくるような描写をしてください」

もうすこし詳しく説明すると、キャラの顔や表情、姿がいきいきと思い浮かぶような「キャラの立ち方」をしている、背景や服装が迷わず描けるような描写がある、といったことです。
「絵はおまかせだから」というあいまいな文章は、かえって困ることが多いようです。


文を書いているあなたの脳内に、映像は浮かんでいるでしょうか? キャラの顔が見えていますか?
絵が苦手でも、タレントの映像に置き換えたってかまわないと思います。映画監督になったつもりで。

キャラの顔が見えている文、背景が見えている文、意識してみることをおすすめいたします。

でもあんまりそれをしつこく具体的に描写すると、今度は読者さんにとってうるさすぎます。
そこらのバランスを身につけるのは、たくさん書く、たくさん読む、でしょうね。

絵なら見えているぞ、という場合、見えているだけで文の描写が足らないと、他人にあなたの脳内はのぞけませんから、置いてきぼりになってしまいます。

設定もそうですね、データの羅列にならない形(つまんない学校の授業みたいなのは勘弁)での、ビジュアル重視とか、話芸とか、エピソードを交えた「頭に入りやすい」説明をお願いいたします。

例えば私自身のことを例に挙げると(ほかのかたの書きかたは存じ上げないのですみません)、主人公の知らない出来事や言葉を説明するときは、長くなければすべて会話にして、地の文ではなるべく説明しません。長ければ、たとえば過去の事件なら回想や夢として、ワンシーンを作ってしまいます。

主人公が一人称で、主人公自身の外見がわからない、ということもよくあるので、他のキャラから「きょうの格好、いったいどうしたんだと」声をかけさせる、あるいは鏡に映す、と自然にやって、物語の導入のきっかけにするとか、できることはいろいろあると思うのです。


将来プロの小説家をご希望でしたら、書いている自分以外の読者さんがいて、その大勢に楽しんでもらえなければプロにはなれない、「他人の視点・他人の共感・他人に伝わる・伝えること」を意識してみてください。

蛇足ながらつけたすと、「こんなのぜったい誰も書いたことないはずだ、すごいぞ俺すごすぎる天才」と書いているときに思いがあふれた場合、本当にすごいのかどうか、一度立ち止まってあらゆる角度から考えてみることを、もしもよろしければお試しくださいませ。

もちろん当然ながらものすごい傑作の場合もありますが、念のためご確認をどうぞ(^^)

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