《其の二十三》
ファンレターでよくある質問・業多姫のその後編
この前「よくある質問」を書いてから、そろそろ1年。 今でもずいぶんいただく質問があります。 業多姫のキャラたちの、ラストシーンからその後についての質問です。
六之帖のあとがきに書いたように私は、皆さまがご自由に想像していただけたらと思っています。ですが、作者の責任として、一定のまとまった解答が欲しい、という方も少なからずおいでと判りました。なので、時海が創作メモにまとめたものをご紹介します。 ファンレターやメッセージで質問なさった方には、ほぼ同内容のお返事がされていて、またメッセージのお返事の一部を転載しています。
警告:まだ業多姫シリーズを最後まで未読の方、自分で想像したいとおっしゃる方には、この先立ち入り危険ゾーンです。
*サオトと鳴は最終的に何人の子供を産んだのですか?
「颯音と鳴の子どもの数」は六之帖で一番多かった質問でした。 時海的には四男三女、ラストシーンで笛を吹いていた子が末っ子で、一番颯音=和玖也に似ている、あのシーンは20年後で、子どもたちと犬の名前は皆さまがご自由に考えてください。これが公式回答です。
この解答は、旧サイトのBBSにも、このサイトのメッセージにも書いたので、ここでは少しだけ初公開の秘話を。 最初、業多姫を応募しようと思ったとき、戸谷ノ庄での二人については、イメージとしての創作メモを作りました。 庄へ着いた二人が歓迎の宴の後、結ばれるという設定で、身重になった鳴を残して、颯音は過去の清算の旅に出る、出産予定の春には戻ると約束して、というかんじです。
いざ本当に受賞作の続編を書くことになって、「どう考えてます?」とK美さまに尋ねられ、このメモの内容くらいしか考えてない、と答えたら、即座に没になりました(笑)
ええと、鳴がおふろで颯音とのこれまでを回想するシーンは、すでにメモにありました。二人が結婚するつもりだと聞いた庄の人たちが、結婚式も兼ねてお祝いしようと、鳴に借り物の打ち掛けを用意してくれたので、お風呂にはいるのです。 そのあと、彼女の村娘姿と戦闘服? の袴姿しか知らない颯音が、借り物の古い打ち掛けに感心して「きれいだ」とほめるシーンとか。 でも、それはお姫さまだった鳴には、もう着ないような古くていたんだもので、それでも彼がそう言うのがうれしい、とか。……今、書いてて妙に恥ずかしい……。
「鳴に手を出さない颯音」という設定にしますと言ったものの、理由付けできません。 というか、手を出せないならそれはそれで通せる理由が、実は用意してあったのです。それを少年系レーベルの応募作で出してしまっていいのか……悩んでいったん没にした理由が。 そう、彼の過去です。美形だったために、青津野のお稚児さんとしても拾われたという801設定。
しかし、こっちはおそるおそる切り出したら、なんと没になりませんでした。ストレートにはだめですが、そんなニュアンスを含めた大きい範囲での「自分は手を汚し、身も穢れているという純真な少年の思いこみとトラウマ」を軸にすえましょう、と。 ストーリーの構築の奥深さを、このとき、私はK美さまに教えられました(笑) そうして、細かい部分を自分で作り始めたら、すんなりと世界が開けていったのです。
けっきょく二人が初めて結ばれたのは、戸谷の自宅へ戻って、歓迎の宴を終えた夜です。「歓迎の宴の夜」というのは、外せないな、やっぱり。 二人の結婚式を兼ねた宴が(^^)
*二人は戸谷で何をして暮らしたのですか?
銀という大変優秀なお殿さまがいたので、とても平和でした……何してたんだろ、警備係の「鼠」たちは?(笑)
颯音パパが家事と育児をしていたのは確かです(笑) パパがお仕事の時は犬射原殿や香椎が孫のように育てたんですよ(笑) あと、彼は器用さを活かして、職人街でデザイナーをしていた気がします。染織刺繍の。
鳴ママは読み書きを教えたんじゃないかなぁ。 そして、二人で、護身術の教室もやってました。ときどきは銀のお城に出張して教えるんですよ、家来に。ということでいかが?(笑)
最後は大勢の孫たちに囲まれて老後を過ごし、そんなに間を空けずに亡くなったのではと想像します。どっちかのお通夜のとき、もう一人が「しばらくふたりきりに」と希望して、なかなか戻ってこないので子どもたちが様子を見に行くと、もう一人が手を握って寄り添ったまま、自然に事切れていた、というかんじ。
だから森の中の「連理の枝の樹」のお墓へ一緒に埋葬したのでした、と「業多姫伝説」が締めくくられて、後世に伝わっているのでね。 「業多姫伝説」とは、いろどりつづりの第一話「撫子色の約束」がどらごんマガジンへ掲載されたとき、K美さまがつけてくださったリード(タイトル下の見出しの文)の中の単語です。
余談ながら、犬射原殿と香椎は、仲良くなったような気がしますよ?
*銀と早霧は結婚したのですか?
無事にくっついたのではないか、と予想してます。数年後に早霧は、きっと素晴らしい大人の女性になったのではないでしょうか。 そして、お城の一角で許してくれた両親と共に開業医を始め、「歴史に残る、働く奥方さま」になったのです!
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