《その六》
「コウヤの伝説 2」のネタばれになります。 未読の方は、ご注意をおねがいいたします。
「神野は巨大な龍穴」というのがでてきまして、なんだそれ、という展開になってきました。 これは「風水」です。 金運をよくして幸せになるには、というようなことで「風水」の言葉はこのごろ知られてきましたよね。 その元になった? ひとつが、生きている人が住む家の相のよしあしを見るときに使う「風水」の考えの一部だそうです。 あくまでも「一部」、「風水」は「地理」ともいいます。「地のことわり」ですね。
よい気というのは風によって移動し、水に引き寄せられるので、風が吹きこんで水の溜まっている土地には、いっぱいよい気が集まる、その地形を作るのはなだらかな山並みのかさなりだ、というのが「風をおさめて水を得る」地だそうです。 ここから「風水」の言葉が生まれたとか。
「風水」はそういう「地理」をみきわめる方法論です。気の集まるよい土地には龍がおりたち、地にもぐって住んで、気をまもり、錬成するという説がありまして。白虎や朱雀が守り神という四神相応は、また別の思想が混ざったようですが。
そういう土地は、女神の体の子をうみだす部分にみたてられていて、子孫と命の繁栄を保証する、これが「風水」的な考えです。 神野は大地母神の守護する土地だ、というのが、この物語の根源にあります。命を生み出す土地ですね。 金竜は大地の女神のおつかいです。もともと原始・古代には蛇のすがたでしたが、「龍」という架空のまもり神のすがたが大陸から伝わったのち、人々のイメージが変わりました。
時海のファンタジー世界は和風です。西洋風ファンタジーの「父なる、戦ってこえなければならない存在」とは異なり、「二面性があって、いつまでも切りはなせない母神」という発想が根底にあるのが、この国的なんだと思っています。 もともと土偶……大地母神の思想を研究しようと思っていたし。
児童書の「これまでの作品」に、まだ本になっていない「おうばがふところ」というタイトルを載せてあります。漢字で書けば「御姥ケ懐」です。 これは、地名です。山に囲まれた、泉のある、日だまりのすみやすい土地を指す言葉です。このタイトルのお話は、泣き虫で泣くと嵐を呼ぶ少年が、対照的な性格……おとなしくて弱そうだけれど芯の強い少女、気が強いのにどこかもろい少女、というWヒロインの間でゆれながら成長する、そんな設定です。 女に甘え、泣いて嵐を呼ぶのは、荒ぶる男神なんですね。それをつつみこみ、手の内で転がすのが女神。女神はやさしさときびしさを併せ持つ二面性があり、生と死と両方を握っていて、再生につなげます。 「玉響」に出てきた女神も、そんな二面性の女神です。
母性がまんなかの柱として、でんっと土台に座る、こういうかんじの世界観が、日本の土にあうファンタジーなんじゃないかなと、そういうのを日本の子どものために書きたいな、とか願っているのです。 精進しなくては。
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